予防できる病気

ーーーーー目次ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1)ワクチン接種

    (1) 犬のワクチン

    (2) 猫のワクチン

2)フィラリア症予防

 


1)ワクチン接種


(1)犬のワクチン


わんこのワクチン、どんなのがあるかご存知ですか?

ワクチンは「病気になったとき」ではなく

病気になる前の「健康な動物」に行う予防手段です。

動物病院で受けられる「ワクチン」は2通りあります。

「狂犬病ワクチン」と「混合ワクチン」です。

【狂犬病ワクチン】

「狂犬病」は「犬が狂う」と書きますが、実は犬だけの病気ではないのです。

「狂犬病」はほとんどすべての哺乳類が(もちろんヒトも)かかる可能性があるウィルス疾患で、しかも発症(症状が出ること)すれば100%に近い確率で死亡する、たいへん恐ろしい病気です。

死亡率100%・・・こんな病気は他にはありません。

狂犬病にかかっている動物に噛まれたり、唾液が眼などに入っても感染します。(空気感染はしません)

日本は島国であり、港や空港での検疫によって守られ、50年以上犬の発症はありませんが、世界でも狂犬病清浄地域は数える程しかなく、有病国全体で毎年何万人もの人が狂犬病で亡くなっています。

2013年7月、日本と同じく清浄地域とされていた台湾で、動物の発症が確認されました。

決して対岸の火事ではありません。

 もし、沖縄県で狂犬病が発生したら、、、、私たちや家族の命が危険にさらされるだけでなく、観光業を始め、農林畜産業にも多大なダメージを受け、沖縄の経済活動は深刻な影響を受けるでしょう。

 

「狂犬病予防法」によって、飼い主さんには生後3ヶ月を過ぎた飼育犬へのワクチンの接種義務と、市町村への登録義務が規定されています。

この法律は、犬だけではなくヒトの健康を守るための取り決めなのです。

 

毎年4.5.6月は狂犬病ワクチン接種強化月間ですが、動物病院ではいつでも接種できます。

一番最初にワクチン接種をした年は「市町村登録」を行い「犬鑑札」と「狂犬病予防接種済票」を受け取って、犬の首輪に装着します。

その後毎年ワクチン接種し、市町村へ届出「狂犬病予防接種済票」を受け取ります。

当院では、狂犬病予防接種を行うとともに、豊見城市、南風原町、八重瀬町、南城市、糸満市、那覇市の飼育犬については市町村手続きを代行しています。

 

動物と人とが安全に、健康的に暮らしていける世界を目指して!

狂犬病予防接種をお忘れなく!

 

 

【混合ワクチン】

狂犬病の他にも犬と人の健康を守るためのワクチンがあります。

混合ワクチンといって数種類の病気を1本の注射で予防します。

どんな病気を予防するのでしょう?

 

①犬パルボウィルス感染症

 感染力も、病原性も、環境や薬剤への抵抗性も最も強い

恐ろしい病気です。

激しい嘔吐、血便が見られ死亡率が高いです。

沖縄県では、常在的にに発生しています。

 

②犬ジステンンパーウィルス感染症

 飛沫(空気)感染するため感染力は強く、症状が進行すると死に至ることも多い病気です。

膿性の鼻水や目やに、咳などにはじまり、痙攣や、麻痺 などの症状が現れます。

沖縄県では、散発的に発生しています。

 

③犬アデノウィルスⅠ型感染症(伝染性肝炎)

 高熱が出て、ぐったりしてしまいます。急激に肝機能が

障害を受け、死亡率が高い病気です。

沖縄県では、散発的に発生しています。

 

④犬アデノウィルスⅡ型感染症

発熱、咳、くしゃみなどの「風邪」に近い症状です。

体力が低下し、症状が重くなる時があります。

沖縄県では、散発的に発生しています。

 

⑤犬パラインフルエンザウィルス感染症

 鼻水や、乾いた咳、扁桃腺の腫れなどが特徴です。

仔犬に多く見られます。

沖縄県では、散発的に発生しています。

 

⑥レプトスピラ感染症

 「レプトスピラ」は人も感染する人獣共通感染症です。

沖縄県は全国でも発生率の高い地域です。

この細菌は、河川や湿地に潜んでいることが多いのですが、人の生活に身近な場所でもネズミが媒介し尿中にたくさんの菌を排泄します。

発熱、倦怠感などに始まり、肝障害、腎障害をおこし、 黄疸など(皮膚や粘膜が黄色く染まる)の症状が出てきます。人でも初期治療が遅れると重症化します。

 

狂犬病ワクチンとはちがい「混合ワクチン」には法的規制もなく、あくまで飼い主様の任意です。

しかし、沖縄県ではこれらの病気がまだまだ発生しており、常に感染の危機にさらされます。

感染、発症してしまうと治療も大変で、一回のワクチンの費用をはるかに上回る治療費がかかってしまうことが多いです。

 

生後3ヶ月前後からの数回接種が必要となります。

接種は、ワクチンの種類や時期や回数が適切であることが免疫を定着させるために大切なので、わんこの誕生日をできる限り把握し、獣医師に相談してください。

(狂犬病ワクチンと同じ日には接種できません。)

 

 

 



(2)猫のワクチン


猫にもワクチンがあるのをご存知ですか?

猫のワクチン接種をするときは、室内飼い限定のにゃんこと、外にも出かけていく

にゃんこでは接種するワクチンも違ってくるので注意が必要です。

【室内飼いでも感染する可能性のある病気】

たとえニャンコ自身が外へ出ていかなくても、飼い主さんがどこかからかウィルスを運び込む可能性があります。

 

①猫パルボウィルス感染症

 感染力、病原性、環境や薬剤への抵抗性ともにたいへん強い恐ろしい病気です。

激しい嘔吐、血便が見られ、死亡率も高いです。

 

②猫ヘルペスウィルス感染症

   =猫伝染性鼻気管支炎

 目やに、鼻水が多く、くしゃみ等がみられ、風邪に似た症状です。

熱が出たり、嗅覚が低下することもあり食欲が低下して しまうため、ますます免疫力 が低下します。

街で見かけるニャンコ、お顔が目やにや鼻水で汚れている子がいますよね。

この病気の可能性は高いです。

接触、飛沫(空気)で感染しますよ。

 

③猫カリシウィルス感染症

 ヘルペスと症状が似ていて、目やにや鼻水もみられますが、特徴的なのはひどい口内炎や舌炎で、痛みのため 食事が取れなくなったりします。

ヘルペスと同じく接触、飛沫感染します。

街のニャンコたち・・・口や鼻の周りが汚れている子。 感染の危険性大です。

 

④猫クラミジア感染症

やはり、鼻水や目やになどの症状があらわれます。

【猫同士が関わることで感染の危険性が高まる病気】

人のAIDSウィルス(HIV)と近いウィルスで、猫同士が喧嘩や交尾、グルーミングなどをすることによって感染を受けます。

これらの病気を持っている母猫は出産の時に子猫へと病気を移してしまう可能性もあります。

 

⑤猫白血病ウィルス感染症

 初感染時には発熱などの症状がありますが、一時全く健康状態に戻ったように見えます。

しかしウィルスはニャンコの体の中に潜み続け、やがて 貧血や黄疸、癌の発生などで再び発症します。

感染後2-3年のうちに、80%の感染猫が死亡すると言われています。

この病気にはワクチンがあります。

どうしても外へ行ってしまうニャンコは接種が必要です。

 

●猫後天性免疫不全ウィルス(猫エイズ)

 やはりなんの症状もないまま経過し、ストレスなどのきっかけで発症、貧血や癌化がみられます。

感染しても猫白血病ウィルスほど発症率は高くありませんが、じつは「猫エイズ」のワクチンは一時販売が中止されていました。

日本で多く見られる株(ウィルスの型)への有効性や、注射部位に形成される腫瘤などの問題等があり、接種するときには充分に説明を受けたほうがいいと思います。

ワクチンにたよらず、この病気にさせたくないならば避妊・去勢手術を行い「外へ出さない室内飼い」に徹するしかありません。

 

たとえ元気でなんの症状もなかったとしても、実はすでに病気にかかっており、他の猫に感染させる可能性があり、ある日突然発症する可能性がある・・・・。

それがこれらの病気の怖いところです。

既に感染してしまっている子の発症を抑えるにはいくつかの方法がありますが、もっとも大切なのはニャンコに与えるストレスを最小限にし、免疫力を維持することだと言われています。

「うちのニャンコは大丈夫かしら?」

と思われる方もいらっしゃるでしょう。

猫白血病と、猫エイズのウィルスに感染しているかどうかは、動物病院での血液検査で調べられます。

 

以前の調査結果では、この2つどちらかの病気に既にかかっている猫の確率は、家猫、外猫あわせても20%を超えていました。

10頭いたらそのうち2頭は病気にかかっているということです!

実はニャンコの外出は命がけだった?!

ニャンコには気の毒な世の中です。

 

 


これらの猫の病気はほとんどが「キャリアー」という形態をとり、

たとえ症状がなく、元気であっても病気を移す可能性があります。

初めてニャンコを飼い始めたときはもちろん気になるところです。

また新入りの相棒を増やそうと思った時には、気づかぬうちに

猫同士お互いに病気を移し合う状況が生まれます。

病気の特徴がちょっとムズカシイお話ではありますが、ぜひ病院でご相談ください。

ニャンコが幸せに長生きできますように・・・


2)フィラリア症予防


フィラリア症ってどんな病気?

犬フィラリア(旋尾線虫目・糸状虫上科・犬糸状虫)

ミクロフィラリアという目に見えない仔虫が、「蚊」が血を吸うたびに犬から犬へ運ばれ、犬の体に感染仔虫が入ると、脱皮し成長しながら最終的に犬の心臓(肺に近い血管~右心室へ)に住み着きます。

成虫の大きさは♀で25~30cm、♂で12~20cm。「そうめん」のような体です。

予防せずに5-6年が経過すると、心臓内に20匹以上の成虫がごちゃごちゃいる、という感じになります。

全身の血液のポンプである心臓の中が、こんな虫で埋まってしまうので「心臓病」の状態が悪化し心不全からの多臓器不全へと移行し、わんこたちはとても苦しく辛い思いをしながらまだまだ若いのに亡くなることになります。

 

寄生虫にはたくさんの種類がいます。

飼主さんから「虫下しで殺せないの?」とたびたび質問を受けますが、消化管内(腸の中)に寄生する回虫などとは違い、寄生しているのはかなり大きな虫で、しかも出口のない血管や心臓の中ですから、気軽に殺してしまって大丈夫なわけはないのです。

フィラリアの成虫が心臓に入ってしまってからでは、100%安全に虫を駆除することが難しく、どんな方法を選んだとしても、時に命に関わるようなリスクを伴います。

だからといってなんの対策も取らずに年月が過ぎれば、心臓に寄生する虫体数はどんどん増えて、着実にわんこ達の命を奪います。

成虫の駆除をするときは、治療後の副作用が最小限ですむことを期待しながら、全身の検査ののち、慎重に治療を行います。

 

ーーーーフィラリア症の症状ーーーー

フィラリア症の慢性症状:咳(時に喀血)、運動に耐えられない、腹水、胸水

フィラリア症の急性症状:急激に元気がなくなる、食欲廃絶

            血色素尿(コーラか醤油のような茶色っぽい尿、時にとても濃い

            オレンジ色)が出る

このような症状が出てしまってからではわんこの命を救うことが更に難しくなってしまいます。

だから!!!

動物病院では口を酸っぱくして「フィラリア症を予防しましょう!」と指導しているのです。

・「蚊に血を吸われなければいいんじゃない?うちは室内犬だから大丈夫」

→生後1年半の室内犬でもフィラリアに感染している子がいましたよ

・「蚊取り線香やベープは?」

→完全に吸血を防げますか?散歩の時は?人だって知らないうちに蚊に刺されて「気づいたらカユイ」ってありますよね?

 

ーーーーフィラリア症の予防方法ーーーー

蚊に刺されればまず間違いなくフィラリアは犬の体に入ります(感染を受ける)。

「予防」というのはこの感染仔虫が大きくなるまえに定期的にお薬でやっつけるという方法です。

①毎月1回、飲み薬(錠剤タイプ、チュアブルタイプ)を与える

②年に1回、注射をする

③毎月1回、スポット剤(皮膚に浸透させる薬)を使用する

動物病院では、飼主さんの希望も伺いながら、確実でより安全性の高い方法をご提案します。

【フィラリア予防薬は、その薬理作用と副反応出現の可能性から獣医師の要指示薬となっています。獣医師が診察を行い、フィラリア保虫の有無を確認し、犬種や体重に合ったお薬を選びます。今、いろいろなものがインターネットで購入できる時代ですが、安易に手を出す前にご注意を!確実な予防と安全性のために、まずはじめにキチンと獣医師の診察を受けていただくことをおすすめします。】

 

「蚊」は気温が13℃を下回らない限り吸血活動をする生き物です。沖縄県では冬でも終日気温が13℃以下という日はめったにないですよね?夏ほど蚊の数は多くないとはいえ、感染の可能性はゼロではありません。

つまり沖縄県内では年間を通じて予防を続けて行う必要があります。

本土から引っ越してこられた方、本土では冬の間は予防薬をお休みしてたかもしれませんが、ここではそうはいきません。確実に予防しましょう!

 

 

ーーーー犬フィラリアは犬だけ?ーーーー

寄生虫は種特異性というものが強く、特定の動物にしか寄生しないものも多いのですが、「犬フィラリア」は、犬はもちろんのことフェレットや猫にも寄生することが知られています。

なので、フェレットや猫にも予防薬を投与します。

まれに間違ってヒトの体に居着いてみたりすることもあるそうです。

 

ーーーーみんなで予防すればーーーー

かつて、沖縄県にはヒトのリンパ管に寄生するフィラリアがいて(犬フィラリアとは別のもの)その保虫率は県民の1/3にも達する状態だったそうです。

戦後、アメリカ合衆国の主導により防除治療と調査が開始され、住民に対する薬剤の投与を続け、1978年には沖縄県全体で保虫率が「ゼロ」になりました。

みんなよくがんばりましたね(^o^)//

「バンクロフト糸状虫」というフィラリアは、まだ奄美大島や与論島などで人での患者がみられますが、撲滅は不可能ではないのです。

「犬フィラリア」に罹らないように、飼い主さんたちががんばってみんなで予防や治療に取り組めば、いつの日か沖縄県で「犬フィラリア」を撲滅できる日がくるかもしれません。

身近な「我が子」の健康管理をきちんとすることが、すなわち世の中全体をよくすることにつながるひとつの例ですね。

こういうことも公衆衛生的活動というのではありませんか?

フィラリア予防、始めましょう!そして続けましょう!